 
            
        読めない料理は注文できない。メニューにもっとふりがなを。
インタビュー
2025/10/31
 
            
これらの漢字をぱっと見て、即座に読むことができる方は少数派ではないでしょうか。
魚編の漢字は特に種類が多く難しいため、寿司屋のお品書きを漢字だけで読むのは苦労しそうです。
*それぞれ、読み方は「鱸(すずき)」「 鯒(こち)」「 魬(はまち) 」「鰊(にしん)」

「障泥烏賊(あおりいか)」「 烏賊(いか)」「 章魚(たこ)」「 河豚(ふぐ)」ーー魚編の漢字以外でも、食材の名前は普段使わず、すぐに読み方がわからない方も多いのではないでしょうか。

また、調味料も意外と落とし穴です。「生醤油(きじょうゆ)」を「なまじょうゆ」と読んで恥ずかしい思いをしたという話も聞いたことがあります。
*読み方:山葵 (わさび)紫蘇(しそ)大蒜(にんにく)

野菜や果物の名前も「西瓜(すいか)」「南瓜(かぼちゃ)」「木耳(きくらげ)」「牛蒡(ごぼう)」など、ぱっと見ると何と読むんだっけ、と思う漢字もあるかもしれません。

地名の入った食材名で読み間違えることもあります。例えば「三元豚」は「さんげんとん」と読みますが、「さんげんぶた」と読んだ方、「大山地鶏」も「だいせんじどり」ではなく「おおやまじどり」と読んだ方もいるのではないでしょうか。
このように、飲食店のメニューで正しく漢字が読めずに困った経験は、少なからず誰にでもあるのではないかと思います。
正直なところ、まだルビの概念が世の中に浸透していないため、飲食店のメニューはルビ無しが多いのが実情です。しかし、私たちルビ財団が定期的に訪れるレストランで、奇跡が起きました!
レストランの名前は『vino hirata(ヴィノ・ヒラタ)』。私たちがここを訪れる度に、少しずつルビが増えていることに気づき、最終的にはすべての漢字にふりがなを振る「総ルビ」になっていました。メニューが総ルビになったのを契機に、当財団ファウンダーの松本大が思い切ってお店の方に話を聞いたところ、“ルビ財団の存在がきっかけでルビの重要性に気づき、メニューにルビを増やした”ということが判明。これを聞いた松本は、その場で涙しながら喜んでいました。
ルビを通してご縁がさらに深まったレストラン『vino hirata(ヴィノ・ヒラタ)』。今回、メニューへのルビ振りを発案し実践いただいているお店の方にルビへの思いを伺いました。
メニューを総ルビに

メニューにルビを取り入れたきっかけを教えてください。また、メニューを総ルビにしたことで、お客様からの反応は何かありましたか?
ヴィノ・ヒラタ:
ルビ財団の皆さまがお食事しているときに、ルビについて話しているのを聞いて、「ルビってなんだろうな?」と思ったのがきっかけです。元々、私たちのお店はお魚系の料理が多いので、魚介類の漢字にはルビを振っていたのですが、それ以外の漢字には振っていませんでした。でも、皆さんの存在を知って「ルビって面白いな」と思ったんです。そこで、少しずつメニューにルビを増やしました。正直なところ、ルビを増やすことに最初は少し違和感があったのですが、最近では見慣れて逆にルビに安心感を覚えるほどです。
常連の方々の中には気づいてくださっている方も多いと思います。今後、ふとしたきっかけで感想をいただけたら嬉しいですね。
食と漢字

料理のメニュー表の場合、漢字やひらがな、カタカナを使い分けることで目で楽しむ工夫を施すこともあるのでしょうか?表記の際の、美学のようなものはありますか?
ヴィノ・ヒラタ:
総ルビ表示にしたことで、今までひらがなで表わしていた食材を、あえて漢字+ルビにすることもあります。例えば、茄子や里芋、茗荷ですね。やはり、所々に漢字があるとメニュー全体が締まって見えると思います。他にも、無花果や木耳などはパッと見ではわからないけど、あえて漢字で書くと格好いいですし、ルビがあれば「このように読むんだ」という発見にも繋がると思います。
ルビはやさしさ
メニューにルビを徐々に増やしていって、最終的には総ルビにしたとのことですが、ルビに対する捉え方や気持の変化はありましたか?
ヴィノ・ヒラタ:
私たちのお店のお客様は8割が常連の方なので、中にはご結婚される前から通っていただいて、結婚後はお子さまと一緒に来ていただくこともあります。ですので、お子さまがメニューを見た時にルビがあればやさしいし、読むのが面白いかなと。例えば「鮮魚」という言葉を読んで意味がわからなくても、メニューをきっかけにご両親とコミュニケーションをとって「新鮮な魚」という意味だとわかれば、学びに繋がるかもしれませんよね。メニューを通して、そのような機会も提供できたら嬉しいなと思います。
他にも、私たちのお店には外国人のお客様も多くいらっしゃいます。ほとんどの方は日本語がお上手なのでコミュニケーションがスムーズに取れるのですが、もしかすると漢字は難しいと感じている場合もあるかもしれませんよね。そのような方々にもルビはやさしい配慮になるのではないかと思います。
私自身、最近街中でもルビが気になり始めて、自然とルビを探すようになりました。例えば、他のご飯屋さんに行ってメニューを見た時に、ルビが無いことが多いので「ルビ振ったらいいのにな」とか(笑)。街中には難しい漢字が溢れているので、それを見るたびに「ルビって“やさしさ”だな」と感じています。
vino hirata(ヴィノ・ヒラタ)

麻布十番に佇む『vino hirata(ヴィノ・ヒラタ)』は、四季折々の旬の食材を活かした繊細なイタリア料理と、充実のワインセレクションを楽しめる隠れ家レストランです。白を基調としたモダンな店内にはバーカウンターを備え、落ち着きのなかにカジュアルさも感じられる空間で、日常の食事からご家族・ご友人との会食まで幅広いシーンにご利用いただけます。ワインバーとして、軽いおつまみとともに気軽に楽しむこともできます。
オーナーシェフ・仁保 州博(にほ くにひろ)氏は、本格イタリアンの草分け的存在である平田シェフの味を継承しつつ、日本の四季を映し出す素材や調理法を取り入れた一皿を創り上げています。料理はアラカルトで自由にお楽しみいただけ、豊富に取り揃えたワインとのマリアージュも魅力のひとつです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、その日の気分やご要望に合わせて素材の魅力を最大限に引き出した料理を提供するのも「vino hirata(ヴィノ・ヒラタ)」ならでは。総ルビになったメニューにも注目しつつ、五感で味わう至福の料理を堪能しにぜひ足をお運びください。
vino hirata(ヴィノ・ヒラタ)
住所:〒106-0045
東京都港区麻布十番2-13-10 エンドウBLD2F
 
                                             
            
 
         
                            